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THE屋号 ナチュラル・ダイレクト

 化学肥料も農薬も一切使わず、虫の駆除は手作業。従来の生産環境を見直し、徹底して安全にこだわった野菜を提供する--。千葉県九十九里町で農業を営み、江東区亀戸一丁目の自宅兼事務所を拠点に千葉や都内のレストランに野菜を卸す「ナチュラル・ダイレクト」は、プロの料理人の“本物志向”にこたえるビジネスとして鈴木義裕さん(32)が二年前に始めた。

 袋から出すとバジルの強い香りが広がる。一枚かじったホウレンソウの葉は濃厚な味。水菜の茎をつまんでパキッと音を立てて折れるのは鮮度が良い証拠という。鈴木さんの畑では現在約四十種類の野菜が実っている。契約者の利用状況に合わせて野菜の種類と量を決めるため、一ヘクタールの農地にハーブ、果菜(トマトなど)、根菜、米などさまざまなものを栽培している。近年、生産・流通の履歴をたどる“トレーサビリティー”が食品の表示にも取り入れられているが、「うちは肥料までどこのものを使ったかが明確にできる」と徹底した生産管理を誇る。

 鈴木さんが完全無農薬野菜を始めるきっかけは、三年前におじとおばが相次いで病気で亡くなったことだった。生前に彼らの農作業を目にしていた鈴木さんは、本人が体に悪いと分かっていながら農薬を使わざるを得ない状況に疑問を感じていた。このころ、食の安全が社会的な問題となってもいた。「大地が持つ本来の力だけで野菜を作ることはできないのか」。当時は技術営業職で好成績を挙げる会社員だったが、千葉の実家の農地を利用して新しい事業への挑戦を決意。土壌改良を施して理想とする環境を整備し、家族三人で野菜づくりに取り組み始めた。

 一方で祖父の代は「留蔵」という水産加工業を営んでいた鈴木家は魚との縁も深く、水揚げされたイワシを使った「ごま漬け」も生産している。九十九里の郷土料理をベースにした商品で「一匹ずつ血抜きをし、地元の酢と自家製のトウガラシやショウガ、南柑二十号の皮を使用」と、ここにも独特のこだわりが……。インターネット販売で全国に固定客が増えつつある。「自然を直接届ける(ナチュラル・ダイレクト)という看板からは、こちらの方が文字通り(消費者に)“ダイレクト”ですね」と笑う。

 自ら生産し、納得できる「本物」と「安心」を売る。シンプルだが難しい仕事に挑む鈴木さんの日々は眠る間もないほどだという。

 TEL:3636・0057

 http://ip.tosp.co.jp/i.asp?i=kenkoyasai