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THE屋号 オント

 町工場や住宅の建ち並ぶ墨田区緑にある「ONTOH(オント)」は、同名のデザイン会社が開いたイタリアンレストランだ。店内の洗練された雰囲気からは倉庫だったとは信じがたいが、高い天井から下がるクレーン、壁のタラップなどがインテリアの一部としてかつての名残をとどめる。

 この店を企画したデザイナーの浜川秀樹さん(オント株式会社代表)は、二年前に人形町のデザイン事務所から独立し、パートナーと新たな会社をつくった際に墨田区に拠点を移した。まちの雰囲気を形成するものづくりの土壌が仕事上の感性を刺激すると考えての選択だったという。事務所の階下に設けた飲食店は「地域の人とコミュニケーションが取れるアトリエ、ショールーム的な場所」として自社デザインの家具を置いたり、既存の設備を生かしたインテリアを展開するなど、さまざまな提案を発信する目的を持つ。

 空間構成のプロが内装を手がける一方で、この店で出される食事を“デザイン”するのは、料理長の上村匠(かみむらたくむ)さん(26)だ。実家の葛飾区東立石の洋菓子店「パティスリーコトブキ」で菓子職人の親の背中を見て育った上村さんは、食の道を進むことを早くから決め高校卒業と同時にイタリアに留学した。イタリア料理界でも気鋭のシェフとして知られミラノの店はミシュランの星二つを有するクラウディオ・サドレルさんのもとで合計四年半修業し、二〇〇七年五月に開店した「ONTOH」でシェフになる前は「カノビアーノ東京」(中央区八重洲)の厨房(ちゅうぼう)で働いていた。

 店の屋号は“温故知新”の響きにちなんでいる。古いもの、「和のテイスト」を現代的なデザインに組み込むことで新しい発見をめざす思いがある。倉庫時代の痕跡を消し去らないことや入り口付近に設けられた小さなコケの庭、火鉢を組み込んだテーブルなど要所に現れる。食事のメニューも同様で、上村さんにとっては一流の現場で磨いたイタリア料理を基礎に日本の食材・調理法を融合させた新しいメニューを出すのが、いまの店での仕事だという。そんな店をスタッフは「ラボ(研究室・実験室)」と呼んでいる。

 墨田区緑三の二一の二TEL:3846・0803。午前十一時三十分-午後十一時。日曜と第四月曜、八月十三-十七日は休み。