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THE屋号 からすや書店

 カラス(烏)にちなんでつけたと思われやすい店名だが、由来は農家のもみすり仕事に使う唐臼(からうす)。名付けたのは、店主の後藤修一さん(51)の祖父だ。祖父は、もみすりを請け負うため、唐臼を載せたリヤカーを引いて村を回った。

 江戸川区立葛西中学校の校庭に面した「からすや書店」(同区中葛西二丁目)は、後藤さんの祖母が昭和初期に開いた雑貨屋が前身で、戦後、出版取次店に勤めていた父親が店を引き継ぎ書店を始めた。唐臼に愛着を感じていた祖父が雑貨屋を「からうす」を一字詰めた「からすや」と名付けたもので、書店に変わったときもこの名を引き継いだ。

 後藤さんが同校に在校していた当時は長島町という町名で、一帯にハス田や水田が残る農村地帯だった。ハスの実を取って食べ、農家の人に怒られたり、新川で同級生と泳いだりした。埋め立て前の葛西沖で潮干狩りをしたこともある。昭和四十年代始めの同校は完全給食の実施前で、店で全生徒分の菓子パンを仕入れ、後藤さんの母と伯母がリヤカーに積んで搬入した。後藤さんは、「いつも同級生に『お袋さんが来たぞ』と言われ、照れくさかった」と振り返る。

 店を継いでからは下校や部活動が始まる前の時間を利用して遊びに来る生徒を部屋に上げ、話し相手をするようになった。いまもバスケットボール部に所属する長男が、部員を連れて部活の時間の前に来る。部屋でくつろいだ部員たちは、時間になると「ありがとうございました」と礼を言って学校へ戻っていく。

 「生徒との交流は、良い思い出。自分の財産」と言う後藤さんは、現在、PTA副会長で、「自然に恵まれのどかだった昔と比べ、地域の環境も大きく変わったが、少しでも子供たちがたくましく成長していくための手伝いをしたい」と話していた。

 TEL 3689・1770