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震災避難者の「東雲の会」 東京ゲートブリッジで〝涼〟の販売開始

 かき氷、冷やしキュウリ、冷たいラムネ。暑い夏に外歩きする人の喉を心地よく潤し、体を冷やすメニューの販売が、東京の新名所・東京ゲートブリッジのエレベーター付近(江東区若洲、若洲公園内)で7月14日から始まった。運営しているのは、江東区にある国家公務員宿舎「東雲住宅」に住む、東日本大震災や福島第1原発事故の避難者の交流組織「東雲の会」の販売部だ。
 始めたきっかけは、今年3月11日に東雲住宅で行われた震災の追悼式で、同会の女性部が振る舞った「すいとん」。出席した山﨑孝明江東区長が、「こういうものを人が集まるゲートブリッジで販売してはどうか」と、「東雲の会」の藤田泰夫会長(60)に提案した。
 藤田会長は震災前に福島県浪江町で、家族ですし店を経営していた。サケの放流時期に、放流場所で店を出していた経験もあり、区長の申し出を受け、会員に販売部への参加を呼びかけた。
 「でも、最初は誰も来なかったんですよ」と、藤田会長は振り返る。「利益はみんなで分けて収入になるが、当初の経費は持ち出しですから、経験のない人にはなかなか勇気がいることなんでしょう」。
 その後、藤田会長が改めて声をかけたところ、10人ほどが集まった。7月に入り開店日を決めてからは、福島から以前使っていた流し台やガス台、保温庫など、持ち出せるものだけを2トントラックに積み込み、急ピッチで準備を進めた。
 会員らの協力でプレハブの店舗用建物を発注し、近隣の酒店はビールサーバーや冷蔵庫を貸してくれた。水道は区が、電気は若洲公園が発電機を貸し出し、オープンにこぎ着けた。
 開店初日からの3連休には、ゲートブリッジを訪れたたくさんの人が立ち寄り、手伝ってくれる人も出る好スタート。藤田さんの息子で、販売部の店長を務める雄一さん(34)は、以前のように家族で店をやりたい思いはあるが、避難生活の中ではまだ先のことを決めることができない。「今は、昔からの仲間と働ける場所があることがうれしい」と話す。
 7月12日の定例記者会見で山﨑区長はこれについて、人の集まる場所で物を販売して避難者の収入になれば、と考えたと語り、「働いてやる気や意欲が湧けばと思った。ごちそうになったすいとんがおいしくてねえ。ゆくゆくはああいうものも販売したらいいと思う。いっぱい売れて避難者のみなさんが元気になれば」とコメントした。
 藤田会長は「観光客が多い場所なので、立ち寄ってくれる人に旅のいい思い出のひとつになるよう接したい」と話す。避難者の中には今でも家にこもりきりの人や、精神的に悩んでいる人もいる。「我々は海のそばで育った。若洲は潮の香り、海の匂いがする。東雲住宅の人にも来てもらえればと思う。知ってる我々がやってるんだから」とも。
 営業は午前10時~午後4時(日により午後6時ごろまで)。11月中旬まで開く予定で、今後、時間延長や、名物「浪江焼きそば」などメニューの拡大も考えている。