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迫る両岸の風景、名前通り静かに スカイシップ「静かに」乗船体験

 8月下旬から墨田、江東区を流れる河川で舟運観光の社会実験が始まり、北十間川、旧中川、小名木川で観光船の姿が見られるようになった。正式な運航開始は来年以降になるが、社会実験がこれまでの単発のイベント的なものから、約3か月(4期分)という一定期間を設けて実施するものに移行したことで、東京・下町の内部河川を利用した観光船事業はより実現性を増してきた。
 下町で船といえば隅田川や東京湾の屋形船の印象が強いが、大きな川を大きな船で航行するクルージングと違うのは、両岸の風景がすぐ近くに迫る水路のような場所を進んでいくことだ。人工的に開削された歴史を持つこれらの内部河川は、周辺の大河川との水位を閘門(こうもん)で調整しているため流れが静かで、カヌーやボートの練習に利用されることも多い。
 こうした場所では、従来のモーター船が往来すると少々にぎやか過ぎるかもしれない。今回の社会実験に参加する企業の中には、航路の特性を考えた〝音〟への配慮も視野に入れているところがある。スカイシップ株式会社(中央区月島)が新たに開発した小型電動船は、「静かに」という名前の通り「和船のように静かに進む」のが特徴だという。タイに造った造船所で独自に開発したこの船は、外観も平船のようにシンプルで、乗客は水の存在をすぐそばに感じることができる。いずれは屋根を取り付ける予定のようだ。
 8月下旬の一日、「静かに」に乗船した。現時点では定員が6人と、小グループでも貸し切り状態で船を〝独占〟できるというのはぜいたくだ。東京スカイツリー直下の船着き場を出航し、北十間川を東へ進んで行くと、船から出る音がほとんどないことに気付く。電動モーター付近からわずかに聞こえる水音よりも、両岸の工場が出す音、住宅の生活音、虫の声などが大きく耳に入り、船自体の存在が消えたようにさえ感じる。モーターの音は、さらに小さくなるように改良が進んでいる。
 今回のコースは北十間川から旧中川を通り小名木川、横十間川を回る2時間30分の行程。長丁場にも思えるが、いざ乗船するとそれぞれの河川に異なる特徴が見られ、飽きることはない。旧中川の開放感あふれる景色、小名木川では4羽の黒サギに出会い、帰途の横十間川と北十間川の合流地点では、出迎えるように姿を見せる東京スカイツリーに息をのむ。
 よく見知った町を異次元から眺める体験は、長年この土地に住んでいる人にこそお勧めしたいところだ。
 「静かに」による舟運観光社会実験の第2期は9月10日~17日(16日を除く)。問い合わせは、スカイシップ株式会社「静かに」クルーズ担当電話090・6514・5499。