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転換図る墨田区の産業振興策

“ものづくり”支援の手法を模索

転換図る墨田区の産業振興策

中小企業センターは、区内事業所の社員や事業主の相談に応じる窓口となっている

中小企業センターは、区内事業所の社員や事業主の相談に応じる窓口となっている

   墨田区内の産業の中核をなす製造業を取り巻く環境は、この数十年で大きく変化した。東京スカイツリー開業をきっかけにメード・イン・ジャパンの技術が改めて注目される中で、後継者不足や経営難にあえぐ区内の“ものづくり”をどう支えていくかは行政の中心的な課題でもある。新しい支援策として既存の事業所と個人のクリエーターをつなぐ試みも始まった。 

  墨田区では1979年に全国で初めての「墨田区中小企業振興基本条例」を制定し、製造業を支援する態勢を早くから打ち出した。当時は、産業振興を通じた地域活性化が将来展望として描かれ、技術力向上、ものづくりのイメージアップをめざした独自の施策が次々と展開されていった。86年に建てられた、すみだ中小企業センター(墨田区文花)はその一つで、経営や技術面での相談事業や工作機械、精密機器の開放利用といったサービスを1か所で提供できる先駆的な施設として登場した。現在でも、専門知識を備えた相談員が常駐し、年間約3800件(2013年度)の相談に対応、巡回相談などで事業所の現状把握にも努めている。こうした情報はセンター開設の前年に作られた「企業台帳」に“カルテ”として集積し、14年度から始めた廃業を決めた事業者の事業承継をサポートする施策にも生かされている。

   しかし、約30年前には約6600軒あった区内の工場数は、約3000軒と半分になり、最盛期の3分の1近くまで減っている。これに伴って利用者の減った中小企業センターのあり方についても昨年頃から議論され始め、今後具体的な方向性が示される。2年前の13年3月に出された「墨田区産業振興マスタープラン」は、現在の区内企業のニーズと可能性を踏まえて今後の産業振興に何をすべきかの絵を描き、製造業については作家やクリエーターなど個人のものづくりと区内企業を結びつける仕組み作りをポイントの一つに据えた。

   13年度から同区で始まった「新ものづくり創出拠点整備事業」は、区内の空き工場などを活用して製造関連の人材育成やコミュニティーづくり、異分野のマッチングを目的とした場所の創設で中小企業をバックアップする制度だ。改修費、設備購入などの費用を全額(上限2000万円)負担する手厚さが施策に対する本気度を表している。既に、「ガレージスミダ」(同区八広、浜野製作所)、「MEW(ミュウ)」(同区太平、丸ヨ片野製鞄所)の二か所が初年度に開設され、町工場や皮革製品の職人の技術拠点が登場した。

   この春からは、印刷会社「サンコー」の工場に直結したシェアオフィス「co-lab(コーラボ)墨田亀沢 re-printing(リプリンティング)」(同区亀沢)も3月20日にオープンした。フリーで働くデザイナーや写真家が階下の印刷会社で印刷や製本に関して相談できるほか、室内の壁面には区内の印刷会社を紹介するコーナーも設けられている。双方の接触から新企画が生まれるなど、クリエーティブな人材を自社で抱える余裕のない中小の印刷業界の新たな展開につながることも期待されている。

障害者の自立の可能性を広げる車椅子作りを目指す拠点「レル」

障害者の自立の可能性を広げる車椅子作りを目指す拠点「レル」

   電動車椅子の工房が設立した「レルcommunity」(同区本所、さいとう工房)は、障害者の就労につながる車椅子作りをめざす場所だ。既に同社が開発している、狭い場所での小回りが利く電動車椅子の技術などを活用し、障害者就労の課題解決に向けてできることを様々な分野の人材と模索する。開発者で社長の斎藤省さんは「5年後のオリンピックに向けて、東京がハイテク技術を使用して障害者も社会に融合して活躍する都市として世界にアピールできるようにしたい」と熱く語っている。