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谷中の「HAGISO」が1周年

 台東区谷中の住宅街の一角で3月9日、「HAGISO」がオープン1周年を迎えた。黒く塗られた建物の扉を開けると、左側に30席ほどのカフェ、右側には天井まで約6メートルの吹き抜けになったギャラリーが広がる。運営する建築家の宮崎晃吉さん(31)は、「HAGISO」を「最小文化複合施設」と呼ぶ。
 もとは1955年に建てられた2階建ての木造アパートで、隣接する大家の宗林寺が「萩寺」として親しまれていたことから「萩荘」といった。2004年からは、東京芸大の学生たちのアトリエ兼シェアハウスとして使われていたが、東日本大震災をきっかけに、取り壊されることに。そこで、「最後に何かしたい」と、萩荘に集っていた学生やアーティスト約20人が建物全体を使い作品を展示したところ、3週間で約1500人が訪れた。
 宮崎さんは「このままこの建物をなくしてしまうのはもったいない」と、改修のプランを何度か提案し、築58年のぬくもりを生かした「HAGISO」として生まれ変わることになった。以前から「建物の活動自体をデザインしたい」と思っていた宮崎さんは、丸ごと借りて事務所を構え、自身で運営することにした。
 オープンから1年、ギャラリーでは、作品の展示や音楽会、子供たちのための移動図書館「やなかこども文庫」(谷中ベビマム安心ネット主催)、カフェで飲食のほかにパフォーマンスを注文できる「パフォーマンスカフェ」(台東区芸術文化支援制度対象企画「居間theater」の一環)などさまざまなイベントを行ってきた。
 カフェはメニューも豊富で、夜になると近所の年長者も集う。宮崎さんは、「ものを食べるという日常的な機能の中に、現代アートやコンテンポラリーダンスなどの文化活動を忍び込ませ、ミックスする光景を作りたかった。理想は、近所のおばあちゃんが若い前衛アーティストと作品について話す――美術館にはないそんな光景。それが日常の一部になって初めて文化になると思う。それを自然な形ではぐくんでいければ」と話す。
 あす15日、あさって16日には、パフォーマンスプロジェクト「居間theater」の1年間を2人の映像作家が記録した作品の上映会(午後7時開演)とダンス公演「キッチン、リビング、奥の部屋、ステージ」(15日は午後2時、16日は5時開演)「幽霊の技法」(15日は午後5時、16日は2時開演)を開催する。問い合わせは居間 theater ima.theater@gmail.comへ。