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〞親子″の喜ぶ姿 うれしくて

 事故、病気、老い……原因は様々だが、愛犬が歩けなくなってしまったとき、家族は何とかしてあげたいと思う――江戸川区南小岩の「ワンちゃん車椅子工房 アトリエ渡辺」の渡辺三男さんは、そんな犬たちのそれぞれの症状や体型に合わせて、フルオーダーメードで犬用の車椅子を製作している。
 渡辺さんが犬用の車椅子を作り始めたのは17年ほど前。ある日、逃げるように帰ってきた愛犬の「ケンちゃん」が、事故にでも遭っていたのか、その後だんだんと後ろ脚が動かなくなってしまった。自動車の整備士をしていたこともある渡辺さんは、何とか歩けるようにしてあげたいと試行錯誤し、自分の手で車椅子を作り上げた。
 元気に歩けるようになった「ケンちゃん」を散歩させていたとき、「その車椅子はどこで買ったのか」と聞かれたのがきっかけで、ほかの人にも作るようになった。「『何年も歩いてない子が外を散歩できるようになった』なんて手紙をもらうとうれしくてね」と渡辺さん。依頼主の喜びは、「ケンちゃん」が車椅子で歩けたときの喜びと重なる。
 2年ほど前からはインターネットでの注文も受け付け、今は遠方からも依頼が来る。2月には宮崎県の木田千穂さん(43)の愛犬メルちゃん(ミニチュアダックスフント・メス、4歳)に製作した。メルちゃんは昨年12月に事故に遭い、1月には歩けないと診断された。「いろいろ探しましたが、どれも本格的なものばかりで、いかにも障害犬という感じがして……。渡辺さんの車椅子はかわいらしくて、私たちもつけるのが楽しくなるような気がしたんです」と木田さん。大きさもぴったりで、すぐに歩けるようになったそうだ。また渡辺さんの人柄もあり、「親切にしてもらってありがたかった」と話す。
 渡辺さんの車椅子のタイプは主に三つ。脚と尻尾を収納するように腰掛けるタイプ、脚が曲がらない犬のために後ろに脚をぶら下げるタイプ、股関節が動かない犬のために後ろ脚を固定するタイプ。「あとは家族から状態を聞いて、症状に合ったものを作るようにしています」と渡辺さん。価格は小型犬で2万円から。製作日数はタイプにより異なる。
 材料もいろいろで、たとえば抱きかかえて乗せるのも大変な大型犬のリハビリ介護用には、人間の赤ちゃんの乳母車を利用。低い状態で乗せた後、高さを調整しながら体を固定できる。また、スプリングを入れて体への負担を減らすタイプもある。
 利益はほとんどなく、現在は老人ホームの送迎バスの運転手をしながら製作にあたっている。完成後、装着に立ち会うと「大抵の子は初めてつけたときは後ずさりしてしまうけど、すぐコツをつかんで上手に歩きますよ。それを飼い主が見て喜んでくれて。その姿を見ると感動するよね。それだけですよ」と渡辺さん。それまで出会った犬と、その家族のことを思い出すように笑顔で話してくれた。
 注文・問い合わせはアトリエ渡辺電話・ファクスとも3650・8820。