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落語を題材に映画を初監督

落語を題材に映画を初監督
葛飾・青戸出身の神田裕司さん

 葛飾区青戸の出身で、長年にわたって映画界で多彩な才能を発揮してきた神田裕司さん(48)(葛飾区東四つ木)の映画監督デビュー作「TOKYOてやんでぃ」がロングラン上映を続けている。東京で今年2月に公開され、「ぴあ初日満足度ランキング」で1位を獲得したこの映画は、その後大阪、山形に続き名古屋でも6月1日から上映が始まった。
 映画の内容は、前座の落語家を軸に、楽屋で次々と起こるハプニングをコミカルに描いたドタバタ人情喜劇。主演はこの映画の撮影後に岸田國士戯曲賞を受賞したノゾエ征爾。南沢奈央、安達祐実、小松政夫、ラサール石井、真野響子らが脇を固める。落語を題材にした映画「の・ようなもの」(森田芳光監督)で主演した伊藤克信とでんでんが年を重ねて再び共演しているのも楽しい。原作は「劇団うわの空・藤志郎一座」の人気舞台で、座長の村木藤志郎もこの映画の中で個性を発揮している。
 神田監督は葛飾区青戸出身で青戸小、青戸中の卒業生。「子供の頃から表現がしたかった」神田さんは、子役としてドラマや30本以上のCMに出演。大型ミュージカルの主演も務めた。ただこれらの活動は「現場を学ぶため」のもので、興味は演技より演出にあった。そして、都立墨田川高校在学中に8ミリカメラと出会う。
 高校2年で演出した自主映画が一般公募による「ぴあフィルムフェスティバル」で史上最年少入選。翌年も監督・脚本・出演を手がけた映画が連続入選を果たす。受賞式では大島渚や大林宣彦ら一流監督と出会い、この受賞をきっかけにプロの作品に参加していく。
 20歳で映画「星空のむこうの国」(小中和哉監督)に主演し、大学時代は小劇団を主宰。家庭の事情でいったん業界から離れたが、商社勤務などを経て32歳で再び映画界へ。映像制作会社「小椋事務所」に入社し、初めて企画・プロデュースした映画「ブリスター」で成功を収めた後、「下妻物語」「姑獲鳥(うぶめ)の夏」「魍魎(もうりょう)の匣(はこ)」など話題作を生み出す。鈴木清順監督の業務窓口も10年務め、同監督の「オペレッタ狸御殿」「ピストルオペラ」でカンヌとべネチアの国際映画祭を経験。「幸福の鐘」(SABU監督)はベルリン国際映画祭アジア映画大賞「NETPAC」を受賞した。
 同事務所に10年間、別会社で3年間過ごし、映画業界から離れる気持ちがあったころ、若手のプロデューサーから機会をもらい「最後の記念として撮った」のが「TOKYOてやんでぃ」。撮影期間は昨年1月のわずか50時間で「ギネス級の速さ」だった。
 また、大震災後のこの時期、映画に込めたメッセージは「価値観の多様性」。不器用に生きる主人公を笑いつつも映画を見た人が「こういう人生あっていいよな、と言えば僕の勝ちです」。この映画は、昨年9月の「したまちコメディ映画祭in台東」でオープニングを飾った。
 今後は「映画と落語を組み合わせて、地区センターや町内会の上映会、小さなお店にも出張上映に行きたい。僕自身もどんどん出向きたい」と神田さん。この映画には「10年ぐらい携わろうと思ってます。それが手弁当でやってくれた人(出演者やスタッフ)たちへの誠意」と強い思いを語っている。
 神田さんへの問い合わせはモードフィルムkanda@modefilms.co.jp