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自治体の輪郭の白地図に絵を描く 葛飾区の西野智博さん

 都道府県や市区町村の境界線の輪郭を利用して白地図に絵を描く――葛飾区青戸在住の西野智博さん(76)は、これを「輪郭画」と名付けて描き続けている。制約された形に絵を描くことには、創り出す苦しみと喜びがあり、「謎解きパズルや知恵の輪が完成した時に似た楽しみがある」という。
 西野さんが輪郭画を始めたのは1年ほど前。自転車やバスでいろいろなところへ行くのが好きで、カメラを持って出かけては景色や建物、変わった形の木の模様や人の顔に見える物の輪郭などを撮影していた。ある時「もうずいぶんいろいろ回ったし、今度はどこへ行こうか……」と地図を見ながら思いを巡らせているうちに、葛飾区の水元・金町辺りの地図の形が「何だか『顔』に見えてきた」と西野さん。これが輪郭画を描き始めるきっかけとなった。
 輪郭に向き合った時、「直感的に絵柄が浮かぶこともあれば、苦労して絞り出すこともある」そうで、共通のテーマなどは作らず、例えば北海道の形には沖縄の民族衣装を着た女性を描いたり、栃木や群馬県はその土地でとれる野菜をモチーフにしたりと、「自由な想像力と創造力で描いている」そうだ。
 会社勤めをしていた頃には、レコード会社で斬新なアイデアのポスターを考案した。また、現在でも多くの人に利用されている大手カタログ通信販売を立ち上げたこともある。「上司から『アメリカには通信販売っていうのがあるそうだからやってみろ』って言われてね。そんなのどうしたらいいのか」と、当時途方にくれたことを思い出したように笑う。
 「アメリカに1か月研修に行って、企画から仕入れまで全部やりました。大変でしたが、とにかく好奇心が旺盛なものでね。立ち上げた後も『売れるものを探さなきゃ。何かないか』って。好奇心や周りを見るということが、輪郭画にもつながっているのかもしれない」と西野さん。
 初めのうちは趣味で描いていたが、昨年8月に様々な年代の人と同時に交流する機会があり、若い人からも「面白い」と言われたことで、外へ向けて発信する気持ちになったそうだ。
 「同じような年代の人ばかりの交流ではなかなか発想が飛躍しない。会社でも下から上には言いにくかったりするでしょう。年代に関係なく、学生からフリーに話が聞けるのはいいですね」
 その後、葛飾区市民活動支援センターに持ち込み、昨年10月30日に行われた「コラボかつしかまつり」で展示。好評だったため、12月に改めて同センターで3週間、展示した。来場者にも描けるコーナーを設けたところ、様々な年代の人が輪郭画に挑戦してくれたそうだ。西野さんは「100人いれば100人全てが違う発想で描いてくれる。この輪を広げたい」と考えるようになり、現在、一人暮らしの高齢者らが一緒に食事や趣味を楽しむNPO法人「中・西会」でレクチャーなどをしている。
 「93歳になる方が『楽しくて仕方ない』って言ってくれるんです。描きたい人には、私も難しかった輪郭を『あなたならどう描く?』って渡してみると、『難しいけど考えることは楽しいね』なんて言ってくれますよ。出来上がった作品について友達と話せば、コミュニケーションツールにもなる。たくさんの人に描いてもらってコンクールや展示会を開き、外国の子供たちと日本の子供たちが絵を交換する交流などもやってみたい。夢が広がって忙しくて」と西野さん。「ニューカルチャーになれば」と笑顔で話した。