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第5回船堀映画祭(詳報)

 「第5回船堀映画祭」が、11月9日、10日に開かれ、会場のタワーホール船堀(江戸川区船堀)では、2日間で延べ2075人の来場者を迎えた(11月15日号で既報)。今週は先週に引き続き、映画祭の2日間のさまざまな場面について報告します。

◎…スタッフバンドが盛り上げに貢献

 船堀映画祭の恒例企画となっている上映前に行われるトークショーなどのイベント。作品の関係者以外にも毎回さまざまなジャンルから出演者がステージに上がり、映画祭を盛り上げている。今回は4月に亡くなった田端義夫さんをしのんで「オース!バタヤン」がオープニングを飾る作品に選ばれ、上映前には「船堀映画祭スタッフバンド」が、「かえり船」「モスラ」など5曲を演奏した。

◎…「やりにくい…」でも爆笑の渦

 「さあ映画を見るぞという雰囲気の中での落語ってやりにくいものでして……」。スクリーンを背に特設の高座でこう切り出す金原亭世之介さんは、寄席の楽屋裏で展開する人間模様をユーモラスに描いた「TOKYOてやんでぃ」の上映前に一席披露。夫婦げんかを題材にした「堪忍袋」で、会場を何度も爆笑の渦に巻き込んだ。続いて登場した神田裕司監督との対談では、作品について「落語家の前座が最も前座らしく描かれている映画」と評し、観客の期待感を高めた。

◎…80年前のフィルムを甦らせる75歳弁士

 昭和の作品への人気が高いのもこの映画祭の特徴だ。今回も「警察日記」(三國連太郎追悼)、「赤穂浪士」「旗本退屈男」などが上映され、10日の「大当り三色娘」の上映前に来場した江戸川区西小松川町の渡部良喜さん(81)は、「今年はこれで4本目。昨年の映画祭でも5、6本見た」という。
 中でも好評だった作品は無声映画「瀧の白糸」(1933年制作)だ。女水芸人の悲恋を描いた同作品は、上映時間120分。全編を弁士・井上陽一さんの活弁が支え、80年前のフィルムをスクリーンに甦(よみがえ)らせた。映画祭の第1回から参加する井上さんは、今年75歳。終演後、「女の声がいまひとつ出ませんわ」と言いながら、次回は1930年制作「祇園小唄絵日傘」上演への意欲を示した。

◎…リハビリの近況聞き淡路さんにエール

 今年7月に大腸腫瘍(しゅよう)の摘出手術を受けて入院中の女優・淡路恵子さんは、映画祭の開催2日前にゲスト出演を断念した。10日の「男嫌い」上映時に会場に駆けつけた淡路さんの所属プロダクション「オフィス香」代表取締役の小林香代子さんは、「車椅子でも行きたいという気持ちが本人にはあったが、今の体力ではケガなどの恐れがあった」と、謝罪の言葉とともに近況を語った。6月下旬の検査入院時は体重が33キログラムまで落ち込んだこと、40年間病院と無縁の丈夫な淡路さんが手術後発した第一声は「小林さん、40年のツケは痛いわ~」だったこと、歩行器でリハビリに励み、量はわずかだが食欲はあること、など療養中の様子が伝えられた。 
 「男嫌い」は過去2回の船堀映画祭ゲスト出演を通じて淡路さんが上映を望んだ作品で、トークショーの途中には、昨年の音声を再生し、「ファッションが素敵なのよ」と、淡路さんがこの作品の面白さを語る部分が披露された。また、実行委員会側が淡路さんへのメッセージを書いてほしいとスケッチブックを観客席に回し、時間内に書き切れなかったファンも上映終了後に列を作って励ましの言葉をつづった。

◎…気持ちをあわせながらモンゴル語の壁を克服

 「野球」という文化がないモンゴルで野球を教える若者の4年間を描いた「モンゴル野球青春記」。主人公を演じた俳優の石田卓也さんは、事前に2、3割と言われていたモンゴル語のセリフが実際の台本では8割以上を占めたこと、1か月間の特訓を経て現地に入ったらモンゴル人スタッフに習ったモンゴル語が通じなくて途方に暮れたことを明かした。それでも、出演したモンゴル人の野球コーチと交流しながら「言葉は通じなくても気持ちで伝わる空気が現場に生まれていった」と語った。

◎…手話のシーンをみずみずしく

 「第35回ぴあフィルムフェスティバル」映画ファン賞を受賞した「震動」は、作品全体に登場する手話シーンのために、キャスト陣が半年前から合宿体制に入り準備を始めたという。バンド活動を始める高校生と、同じ児童養護施設で育つ耳の聞こえない少女の心のすれ違いと絆を描いた同作品は、「バンドの音と手話の“静”のコントラストが映像の魅力」と平野朝美監督。施設の“先生”役で出演した九太朗さんも「手話は気持ちをどのように指先に伝えるのかが難しいが、主役の2人は勘が良く見事に表現していた」と語る。また、制作にあたっては一般社団法人「江戸川ろう者協会」の会員がセリフの手話翻訳や指導などで協力している。

◎…「毎日がクリスマスみたいだったのに」現場を愛する竹中監督

 俳優で監督でもある竹中直人さんは、昨年にひき続いての登場。原作の映画化を依頼されて監督した「自縄自縛の私」について、準備に3年かけたことや縛る技術について撮影前に「専門の人に講習会をやってもらった」こと、初主演となる平田薫さんを緊張させないためにロケハンに参加させたことなどを語った。司会者から“現場好きの竹中”と言われることに触れられると「仕上げが切ない。大好きな役者、スタッフと一緒にいられて毎日がクリスマスのようだったのに、みんないなくなって一人ぼっちになった感覚。音を入れて編集が済んで全部終わると寂しくて一人で泣いてますよ」と熱い思いを語った。
 トークショーには、初期の「無能の人」から竹中作品にかかわる撮影監督の寺田緑郎さんも参加した。今回の作品の思い出話を語る竹中さんが時々寺田さんを見て一緒に笑う様子が、気心の知れた間柄をうかがわせた。

◎…ボートレース江戸川のレストランに1000人

 第5回映画祭では協賛した「ボートレース江戸川」が参加者特典として場内レストラン「笑和」の人気メニューを無料提供した。モツ煮込み定食やカツカレー、麺類など多彩なメニューが並び、2日間で約1000人が利用した。