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私のミニ自分史 オランダは第2の故郷

 「小さな街に行って、何も考えず太陽の光を浴びていると、幸せだなと思うんです」――北威徳(たけのり)さん(43)(江戸川区小松川四丁目)は、六年間過ごしたオランダで出会った人々やレンガ造りの美しい街並み、風車のある風景を懐かしむ。帰国時に仕事仲間から贈られた人気サッカーチーム「AJAⅩ」(アヤックス)のユニホームは、北さんの大切な宝物だ。

 奈良県出身の北さんは大学卒業後、工業部品メーカーに勤務。大阪の海外営業部に異動後は英語を本格的に学び、英検準一級を取得、TOEICは一年で四百点から八百点まで上げた。そして三十歳でオランダに赴任。妻と一歳半の長女を連れて異国へ赴くことに不安はあったが、海外生活にあこがれていた北さんには期待の方が大きかった。

 上司も部下もオランダ人だったが、会話は英語で不自由しなかった。多国語を操るオランダ人は語学の達人で、小さい子でも英語をしゃべる。特にロッテルダムで暮らした後半三年間は充実した時期だった。

 オランダ人は「社交的で温かく、弱者へのいたわりが社会全体で成り立っていました」。物を大切にして長く使うのは「ケチでなく合理的」。また「背が高く、男性の平均で百八十五センチぐらい。百七十七センチの私は小さいサイズでした」。サッカー熱がすさまじく、オランダが四位になったワールドカップ・フランス大会の時は仕事を中断してテレビの前にクギづけになった。「一日十杯飲んでいるのでは」と思われたコーヒー好きもオランダ人の特徴だ。

 街を流れる運河は冬は凍り、スケートができる。「六か月以上の長い冬が過ぎると一気に夏。ヨーロッパの夏はカラッとしていて最高です」。休日は行ったことのない街に家族で出かけ、陽光を浴びながら人通りのない“夢の街”を歩くと気分が晴れた。遊園地や動物園が少ない分、美術館や博物館に足を運び、「フェルメール(オランダ人画家、一六三二−七五)の『青いターバンの少女』を見た時は(感動で)動けなくなった」。

 現在は海外での経験や語学が生かせる新たな職を探しているところ。英語力を磨き、ほかの言葉も学習中だ。職が決まるまでは「郷愁に浸っている状況にはないが、海外、できればオランダ(に関連した職)があれば」と北さん。「青いターバンの少女」を題材にした映画「真珠の耳飾りの少女」も見たし、原作の本も買ってきた。北さんにとっては「オランダは第二の故郷」なのだ。