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“福杖”50本つくりました

“福杖”50本つくりました

葛飾・西水元の中田さん

 独自の技術で自然素材をつなぐ

 

 出発点は「水戸黄門」――。ハンドメードで個性的な杖を作り続けるのは、葛飾区西水元の中田卓さん(69)だ。まるで仙人が持つようなこの杖を中田さんは「福杖」と命名。友人らの要望で製作した品と自身で保有する品を含めて、これまでに50本ほど完成させている。

 長年、靴の木型を製造する仕事をしてきた中田さん。一方、釣りを趣味として、30代後半以降は釣り竿を手作りしていた時期があった。定年後、2006年に妻に先立たれ寂しい日々を送っていたとき、友人の勧めから釣り竿作りを再開。その要領で、杖の製作を思いつく。

 

中田さんは遠方まで出向いて空き地などに自生するアカザを掘る。現在200本近くストックがある

中田さんは遠方まで出向いて空き地などに自生するアカザを掘る。現在200本近くストックがある

   最初に作ったのは、「水戸黄門」の杖をイメージした装飾品としての杖。これが友人知人の間で評判を呼び、口コミでオーダーを受けるうち、さまざまな杖を作ってきた。今では「生きていくためのハリ。人のために役立っている喜び」が杖作りにはある。

   「福杖」の主な素材は中国原産の植物「アカザ」。乾燥した茎は硬くて軽く、水戸光圀もアカザの杖を使ったとの文献があるという。また、根の部分は太く丸みを帯び、なかには土の中で自然と曲がったものもあって、形状が杖の握り部分にマッチしている。

   このアカザ1本で作ったものもあるが、多くは独自の技術を用いて竹、サクラ、ケヤキなどをつなげて「福杖」は完成する。「自然にあるものを取り入れて、木のいいところを取って1本の杖にする。組み合わせを考えるのが大変だけど楽しい」。自然の素材を生かした杖は「1点も同じ物はない。味があるんですよね」と中田さん。

   表面には漆を10回ほど重ね塗りし、1本の製作期間は通常2~3か月と、その手間は想像以上。技術を追求して「作れば作るほど難しくなる」が、その苦労も楽しんでいる。「もらった人がニコーッて笑ってくれるんだよね。人に喜んでもらって何かしているのが長生きの秘訣かも。人をつないでくれる本当に『福杖』です」。

    「福竿」は「福を釣る」、また「福杖」は「福を支える」と中田さん。「福杖」は1本あたり謝礼として1万円を受け取っているが、商売とは捉えておらず、また依頼主と会ってサイズや好みを確かめる必要性もあることから、友人知人の依頼に応える範囲で今後も製作を続ける意向。現在は4本のオーダーを受けているという。

   昨年4月、右足に大けがをした中田さんは初めて杖生活を経験し、その大切さを痛感した。ただ自作の杖で外出すると、道行く人が「私の足を見ないで杖を見て」いた。今後の夢は「個展をやってみたい」と話す中田さん。さらには、この個性あふれる杖を複数の人で持って「銀座を歩いてみたい」とユーモアを交えて話している。