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点字用紙の切れ端で“まきまきクラフト”

 真っ白な陶器のオブジェ? いえ、実は点字用紙で出来ています――。ユニークな素材を使って作品を制作したのは墨田区業平在住のイラストレーター、野本郁榮さん(60)だ。友人の依頼を受けて点字用紙の切れ端の再利用法を考える中で「まきまきクラフト」を考案した。ひきふね図書館(墨田区京島)で8月11日に開かれたワークショップでは、子供たちに“スカイツリー”の作り方を教えた。
 「まきまきクラフト」は、点字用紙のミシン目で切り離す部分を使った工作だ。切れ端となる帯状の紙を接着して長くつなげ、紙テープのように固く巻いた後に中心を数ミリずつ引き伸ばしながら形状を作っていく。微妙な伸ばし加減で円すい形にもドーム状にもなる。陶芸経験のある野本さんは「ろくろで土をのばして器を作る感覚に似ている」という。
 作品づくりのきっかけは、点訳ボランティアの活動をする友人の齊藤宮子さん(56)(墨田区石原)が作った。齊藤さんが会長を務める点訳サークル「きつつき」では、図書・広報紙などの点訳作業で打ち損じや本体と切り離した不要な紙が大量に出る。この紙は古紙リサイクル対象外の特殊な紙のため大半は廃棄する。「もったいない」と感じていた齊藤さんは絵以外に手芸なども得意な野本さんのもとに「何かに使えないか」と大量の紙を持参した。
 「丈夫で良い紙、凹凸があるので陰影がつく」と、作家の視点で点字用紙を扱う野本さんは、台紙に貼ってキャンバス風に使ったり、花を巻いたりとアイデアも豊富だ。作品は夫の清勝さん(68)が営む印刷店の店先を飾り、商品として購入する客もいる。そんな作品の一つとなる「まきまきクラフト」は、花瓶作りから始めて何度か制作している時に、“塔”の形状が思い浮かんだという。作品は、筒状の内部をライトで照らすとパンチ穴の重なりで生まれた幻想的な模様が浮かび上がり、異なる表情が楽しめる。
 11日の工作教室は、「ひきふね図書館パートナーズ」の区民ボランティアに参加する野本さんが企画し、点訳「きつつき」の活動紹介と一緒に行われた。午前・午後で合計19人の小学生が「まきまきクラフト」に取り組んだ。紙を巻いてロール状にする制作工程は一見単純だが、“緩すぎず、固すぎず”の巻き加減は意外と難しく、紙が途中でほどけてしまい、やり直す参加者もいた。それでも最後は全員が“スカイツリー”を完成させて笑顔で記念撮影に臨んだ。