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江戸時代から続く「東八拳」 その面白さと奥深さ伝えたい

 「ヨッ」「ハッ」「タチ」「ニィノ」――。畳の部屋に威勢のいい声が響く。声の主の一人、武藏野庄太郎こと杉浦宏さん(69)(葛飾区堀切)が、日曜ごとに熱心に稽古に励んでいるのは、江戸時代から続く「東八拳(とうはちけん)」だ。
 東八拳(藤八拳)は中央に土俵を置き、行司を挟んで東西二人の拳士が向かい合い、「調子」と呼ばれる掛け声で互いの間を合わせながら、拳の「型」を打ち出し合って勝負する競技。三つの「型」は、じゃんけん同様〝三すくみ〟の構造にあり、「鉄砲」(こぶしを握る)を持つ猟師は「庄屋」(手を膝の上に置く)には頭が上がらないが、その「庄屋」は「狐(きつね)」(手のひらを相手に向ける)に化かされ、「狐」は鉄砲にはかなわない、といった具合。3拳連勝して初めて1番勝ちとなるのも特徴で、そのため、じゃんけんのような運任せではなく、連続的な相手の動きを見て心理を読み、駆け引きもしつつ、頭も体も使って拳を打つところが面白さであり奥深さ。また、畳1枚の空間で手軽にできる点も魅力だ。
 杉浦さんが、現在の師匠である「日本東八拳技睦(むつみ)会」の武藏野扇樂(本名=松本吉弘)さんらと知り合ったのは3年前の春。花見客でにぎわう隅田川沿いでこれを楽しむ同会会員たちに出くわして、「東八拳ですね、おやじがやってたんで、って声掛けました」。そのまま見学や体験に誘われ、5月には武藏野門下に。以来夢中になって「もっと早く出会っていりゃ良かったなと思いましたよね」。
 同会では毎年4~6月の日曜に10週ほどかけて東八拳の星取り会を浅草(台東区)で開き、番付も発表されるが、杉浦さんは昨年に続き今年も関脇にとどまった模様。「正直なもので、稽古を重ねるだけ上位に上がっていきますよ」と、日々の成果が表れたこの好成績を喜ぶ。
 頭と腕全体を使う東八拳は「高齢者の認知症予防になる」と杉浦さん。一方、同会の中には小学生の拳士も。初心者の子供でも、まずは「両手で型を出せればそこから教えられる」という入り口の広さがある反面、ひと口に東八拳といっても実際には大別して「正拳」「一本間拳」「軟拳」の3種があり、勝つための技術についても「なかなか身につかない。ともかく深いですよ」。
 同会の事務局を務めるキャリア約30年の扇樂さんによると、現会員は70人ほどいるが、実質的な活動人員は30人弱とのこと。葛飾で競技会は開かれていないが、杉浦さんは「地元の葛飾区で広めたい」との思いもあり、まずは東八拳の面白さを知ってもらいたい考え。
 同会では稽古の見学や体験を随時受け付けている。また、地域の各種催しと連動した試合や稽古の披露、学校の子供たちなど若い世代への伝承の機会も大切にしたいという。問い合わせは扇樂さん電話3782・4275。