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江戸の味伝える工場直販に人気 東小松川の35歳のくず餅会社社長

 工場が建ち並ぶ江戸川区の東小松川地域で異彩を放つピンク色のビルは、江戸時代から続く伝統の製法でくず餅を製造し、都内の和菓子店に卸している山信食産(1955年創業、江戸川区東小松川)の本社。3代目の小山信太郎さんは、この1階工場前で週1回直販を実施。また、「くずもち新聞」を発行し、母の日ギフト用のくず餅を考案するなど、柔軟な発想を持つ35歳の若き社長だ。
 自身をユーモア交じりに〝くず社長〟と呼ぶ小山さん。元は高校の英語教師で、6年ほど前に同社に入り、2010年4月に父・信光さんの跡を継いで社長に就任した。同社の〝江戸前〟くず餅はスーパーなどで見かけるくず餅と違い「小麦でんぷん」を使用。1年半発酵させる「和菓子唯一の発酵食品」で、しっとりした独特の弾力が魅力だ。ただ、この製法を続ける会社は都内に6、7社しかなく「絶滅危惧種です」と話す。
 直販は、地域活性化の気持ちも込めて昨年10月に始めた。卸の品は加熱殺菌が必要だが、直販品は3日ほどしか日持ちしなくても、「おいしいものを食べてもらいたいという思いが以前からあり、加熱殺菌していません」。半年たった今では地域にすっかり浸透し、毎週火曜の直販日には子連れママからお年寄りまで幅広い年齢層が来店するようになった。
 また、社員が直接消費者と触れ合うことで「お客さんの『おいしい顔』を見ることができるようになった」のも収穫。客の笑顔がやりがいにつながり、「働くってこういうことじゃないかな。いい流れです」とうれしそう。
 一方、近隣に配布している「くずもち新聞」は、今年のバレンタインデーとホワイトデー、そして母の日に合わせて過去3回発行。内容はくず餅に関する知識や情報、日々の仕事上の逸話、直販での出会いや客の声の紹介、季節に合わせた贈答品の紹介など。明るくも誠実な記事の文面には小山さんの人柄がにじむ。
 創刊号ではラジオ番組で毒蝮三太夫さんが訪れたことや、雑誌「散歩の達人」で同社が取材を受けたことを紹介。第2号では、東京農業大学の教授らが工場を訪れ、くず餅の研究が始まったエピソードを載せた。最新の第3号は母の日特集で、1万枚を社員と配った。
 「世界初」というハート形のくず餅「恋する久寿(くず)餅」を組み合わせた母の日の贈答品は、3年前からネット上で限定販売してきたが、昨年の母の日は地元の折箱製造会社「渡邊折箱商店」による桐箱仕様の「わっしょい久寿餅」を新発売。さらに今年は、カーネーションの花を使った珍しいジャムとセットにした。そのほか、パッケージに「義理」の文字が書かれたバレンタインデー限定品や、敬老の日の限定品などオリジナル商品も販売してきた。
 新たなことに挑戦中の今は「これから羽ばたくための助走期間」で、「心と心が笑顔でつながるような仕事をしたい。(客も社員も)誰もが喜ぶようないい会社になれたら」と笑顔を見せる。
 直販は毎週火曜正午~午後5時30分。同社は江戸川区東小松川4の20の12。電話3656・4460。