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東日本大震災 被災地の訪問から

東日本大震災 被災地の訪問から

繁華街でも少ない人の数

切ない仮設住宅の環境悪化

猿若清紫恵さん(江戸川・松江)が6回目の訪問

 

江戸川区松江在住の日本舞踊家、猿若清紫恵さん(65)は、東日本大震災の翌年、2012年に被災地を慰問した時に現地で知り合った人々と今も交流を続けている。「支援と呼ぶほど大げさなものではない」というが、被災地で暮らす人々を忘れてはいない、という思いを伝えるためにも友人や日舞の弟子たちを連れて毎年彼らに会いに行く。震災から4年半がたった9月11日には4日間の行程で6回目の訪問を行い、岩手県大船渡市の屋台村、宮城県南三陸町の志津川中学校グラウンドや同県女川町の仮設住宅を訪れた。

大船渡市宮田仮設住宅の人たちをドローン搭載のカメラで撮影(撮影=Knob)

大船渡市宮田仮設住宅の人たちをドローン搭載のカメラで撮影(撮影=Knob)

電車とレンタカーで回る被災地は、海岸沿いに巨大防潮堤の建設が進み、がれきが積みあがっていた場所は一帯が盛り土と重機で整地が進められていた。津波被害の現場としてピンと来ないほど撤去や整理が進んだが、飲み屋が連なる屋台村や最もにぎやかだといわれる石巻駅周辺の繁華街でも人の少なさが歴然としていたという。

訪問先で猿若さんは弟子らと日本舞踊を披露する。3年前の最初の訪問では見知らぬ慰問客に笑顔を向ける余裕もなかった仮設住宅の住民が今では皆が予定を空けて待っている。舞台の最後に「花は咲く」の音楽に合わせて観客に一つずつ配った花のボールペンは、横浜の雑貨店で購入する際

志津川中学校グラウンドの仮説住宅(撮影=Knob)

志津川中学校グラウンドの仮説住宅(撮影=Knob)

に事情を聞いた店主が寄贈してくれた。猿若さんの長男で写真家のKnob(ノブ)さんは、記録係として毎回同行し集合写真を撮影しているが、今回は小型無人飛行機を持参して航空写真を撮った。ニュースでも話題になったドローンの演出は大変喜ばれたという。

そんな交流を通じて被災者の生活の実態や声なき声を拾い、東京に持ち帰るのも旅の目的の一つだ。昨年からフェイスブックも始めて自ら発信するようにもなった。

今回最も強く感じたのは仮設住宅の居住環境の悪化、と猿若さんは語る。当初2年程度の想定で使用を開始した仮設住宅は、建設の遅れや費用負担の大きさで公営住宅への移転が進まず、やむなく住み続けている人は少なくない。見せてもらった居室の内部は、水はけの悪さからカビに悩まされ、すきま風や湿気をビニールテープや新聞紙などの応急処置でしのいでいた。狭くて物があふれる部屋にストーブの置き場もなく、冬は電気代のかかるエアコンを極力使わず厚着して耐えるという。

志津川の仮設住宅では猿若さんの手を取り「ここで死にたくない」と訴える80代の女性もいた。「オリンピックの予算があるなら、なぜ仮設の一つも修繕してあげられないのか」と、肌で感じた切なさは義憤に変わる。