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“最後のしんこ細工職人”が「百個展」

 葛飾区柴又の「アトリエ485」で11月30日、「しんこ細工 百個展」が開かれた。しんこ(新粉)細工師の小川三智之助さん(78)が、40余年の経験談や、しんこ細工の歴史などを話しながら約5時間にわたって作品を制作。終了後は、試食や土産として来場者にふるまわれ、子供たちだけでなく大人も、わくわくと目移りしながら作品を選んでいた。
 しんこ細工とは、米の粉を湯で練って蒸し、色粉で色を付け、果物や動物などの形をつくるもの。目で楽しんだ後は黒蜜を付けて食べる。お菓子をあまり口にできない時代に子供が楽しみに買いに来たおやつで、昭和30年代頃までは、町中でもしんこ細工を作る姿が見られたそうだ。地方によってさまざまな呼び名で伝わっているが、「江戸・東京のしんこ細工師はおそらく私で最後」と小川さん。
 はじめは、しんこ細工師だった義父から「見よう見まねで覚えた」そうで、「このハサミがなかったらやってなかった」と義父の愛用していたハサミを手に、この日も来場者のリクエストに応えながら、次々と即興で作品を作り出していた。
 今回のイベントは、大道芸人などをイベントやパーティーに紹介する「株式会社 桃プランニング」の田村眞理子さんが、小川さんの技にほれ込み依頼。観光ガイドやイベントの企画で柴又を盛り上げる「NPO法人柴又まちねっと」などの協力で実現した。
 全国各地でその技を披露してきた小川さんだが、今はほとんど依頼を断っている。しんこは制作途中の温度管理なども大変で、どの現場でも妻の助けがあった。「どこへ行くにも2人で、観光もたくさんした。楽しい思い出ばかり。やってて良かった」と振り返る。
 企画した田村さんは、並んだ作品を前に、「十数年来の夢だった百個展がやっと実現してうれしい。ぜひまたお願いしたい」と、小川さんの技をまだまだ眠らせたくない様子だった。