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映画「あん」 船堀シネパルで上映

映画「あん」 船堀シネパルで上映

5月30日の封切りからロングランを続けている映画「あん」。世界45か国で上映が決まり、原作は5か国で翻訳出版されるなど広がりを見せている。9月5日からは江戸川区船堀の船堀シネパルで上映される。初日の舞台あいさつで同劇場に来場する原作者のドリアン助川さんに「あん」に込めた思いを聞いた。

どら焼き店の店長千太郎と、ハンセン病の元患者徳江、母子家庭で暮らす中学生ワカナの3人を軸にした小説「あん」の着想の出発点は、らい予防法が廃止された1996年。ラジオの深夜放送で、「生まれてきた意味」を議論するなかで、「世の中の役に立たないと生きている意味がない」との意見には反論があった。ハンセン病療養所に一生いた人は「一般的な意味で社会の役に立たなかったかもしれない。だけど、その人に生まれてきた意味はないのかというと、絶対そんなことは言えない。ハンセン病を背景に、人の生きる意味を真正面から問う小説を書いてみようと思った」とドリアンさん。

ただ当時は、元患者の知人もなく、手記を読んでも「あまりに強烈でなか

「あん」単行本(ポプラ社刊、1620円)。文庫版も発売中

「あん」単行本(ポプラ社刊、1620円)。文庫版も発売中

なか消化できない。胸の中に宿題を宿しながら、結局は手記を読むにとどまった」。転機は2009年、埼玉県所沢市の催しで国立療養所多磨全生園から来た元患者3人と知り合った。ハンセン病国家賠償訴訟で中核を担った森元美代治さんもいた。

あるとき森元さんから、療養所の製菓部にいた人の話を聞いた。製菓学校に通った経歴を持つドリアンさんは「ようやく自分の土壌に来たな」と思った。一方、森元さんと話すうちに「視点がバッと変わった。今まで患者さんの側に立って書こうとするから書けなかったんだ。患者さんに驚いている俺を書けばいい」との考えに至った。物語のなか、療養所で臆する千太郎は「僕の視点なんです」。

執筆中から、徳江のイメージは「(樹木)希林さんだった」。映画化の打診がいくつか来たなか、ドリアンさんは自身が出演した映画「朱花の月」(11年公開)の河瀬直美監督と、希林さんに手紙を書いて協力を申し入れた。

完成した映画は「小説で目指したところが一緒。河瀬監督プラスたくさんの人々に救ってもらった」とドリアンさん。「人間が生まれて生き抜くことの意味、その普遍的なことを問いかけた映画。そういう点で〝思い〟のある方に見ていただければ」と呼びかけている。

ドリアン助川さん

ドリアン助川さん