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振り込め詐欺の被害を水際で食い止める

笑顔で新年を迎えるために

振り込め詐欺 年の暮れこそ気をつけて!

水際で被害を食い止める 銀行の窓口は“最後の砦”

 

自分の財産が狙われる――。資産家でもなければ縁のないことと一笑に付す

ことができたのは過去の話だ。振り込め詐欺の手口が多様化し、この冬からはマイナンバー詐欺も被害拡大が懸念されている。年末で慌ただしくなると、普段の冷静な判断や勘が鈍りやすくなるので特に注意が必要だ。

こうした状況の余波として、銀行などで預金を払い戻す際に金額が大きいと細かく用途を尋ねられたという人が増えている。他行への預け替えを口ごもったら不審がられた、という経験をした人もいるかもしれない。誤解のリスクを恐れず積極的な声かけで詐欺被害の食い止めを優先させるこうした銀行の姿勢は、警察からの協力依頼に応じてのことだ。

警視庁の公表する資料によると、今年10月までで、都内の金融機関で振り込め詐欺が未然に防止された例は1176件に上る。このうち墨田、江東、葛飾、江戸川、台東の5区では181件。預金引き出し手続き中の何気ない会話が被害の有無を分けることも少なくない。

今年2月の協力事例で本所警察署から感謝状を受けた三井住友銀行錦糸町支店(墨田区江東橋)の場合は、勤続18年のスタッフが活躍した。窓口を担当していたこの女性は、350万円を引き出しに来た高齢の女性に用途を聞いた時に、「息子に頼まれて……」と口走ったことが気になったという。

「自分で現金を持つ時は100万円でも落ち着かない。本当の息子なら高齢の母親に多額の金を下ろして持ち歩くようには言わないだろう」

尋ねても詳細を話したがらず、「息子は会社にいるが電話しないでほしいと言っている」「株の運用決済資金に使いたい」といった内容を聞き出しながら少しずつ確信を深めていった。手には電話番号を書いたメモを持っていたが、かけてもよいかどうかを聞くと「それは困ると相手が言っていた」と断られた。

その後、やりとりを奥で見ていた現金取扱責任者が近づいて交代し、女性から報告を受けた課長が警察に通報した。実は説得の過程でこの高齢者は以前にも詐欺と思われる電話で現金を渡していたことが判明した。「今回は息子が来なければ渡さないから」と語るなど、詐欺を意識する一方で本当に我が子なら助けねば、と焦る親心が行為をやめさせるのを難しくする。結果的に二度目の被害は防止することができた。

窓口担当の女性は「私でなくても気づいたと思う」と謙遜するが、来客との短いやりとりで〝おや?〟と思う感覚は経験の厚みによるものだろう。銀行側も「お客様への声がけが必要な場合のチェックリストなどはあるが、最終的には担当者が水際でピンと来てくれるかどうかが大切」(支店サービス部・川上秀春部長)と、被害防止の決め手を語る。

銀行の窓口の内側には詐欺の疑いが発生した際、すぐに連絡できるよう警察の電話番号が掲示されている

銀行の窓口の内側には詐欺の疑いが発生した際、すぐに連絡できるよう警察の電話番号が掲示されている