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問われる「すくすくスクール」の“学童”機能

 “子供たち全員の放課後の居場所を確保する”理想的な制度――江戸川区の「すくすくスクール」が始まって10年。いま「すくすくスクール」に子供を預けて働く母親たちが危機感を感じている。
 「すくすくスクール」は、江戸川区内の公立小学校の空き教室などを開放して放課後に児童が活動できる場所を提供する事業で、2003年からモデル校でスタートし、3年かけて段階的に全73校に拡大して実施されている。「すくすくスクール」には希望する児童全員が利用登録できる。また、親が仕事などで日中留守になる家庭の子供たちを預かる学童保育も(学童登録として)兼ねている。

「すくすく」評価の声も

 こうした一体化の政策により現在江戸川区には公的な学童保育がなく、子供が小学生になった時に親が共働きの場合は「すくすく」に預けるか、民間の学童クラブを利用するといった選択をすることになる。全児童に安全な遊び場を提供し、ボランティアスタッフを通じた地域とのかかわりを促進する側面から「すくすく」を評価する声も高い。一方で最近は、子供が落ち着いて過ごすための環境面での懸念が保護者から挙がっている。実は校舎を開放するといっても、実際に使えるのは教室2つ分の専用スペースと校庭のみ、という例が少なくない。地域によっては100人を超す登録児童が“すし詰め”状態で過ごし、体調不良の子が出た時に静養させる空間も確保できないこともあるという。

「おやつ」廃止の衝撃

 これに加えて働く母親に衝撃を与えたのは、区が今年度から「すくすく」での補食(いわゆる「おやつ」)の提供を廃止する決定をしたことだ。「全ての子供に分け隔てなく対応するため」「おやつは肥満につながる」といった区側の説明に、「納得できない」と立ち上がった母親たちが、有志で区議会に陳情を提出する動きも見られた。しかし、補食廃止は予定通り実施され、学童登録の児童は給食後から親の帰宅時間まで水以外は口にしない生活を送っている。保護者側からは自前でおやつを用意する「自主運営」を求める声もあるが、実現に至っていない。

「フォーラム」が発足

 この“補食問題”で署名運動や陳情提出に動いた保護者らが、昨年6月に「えどがわ学童保育フォーラム」を立ち上げた。ブログやツイッターで情報発信・情報交換をする緩やかな結びつきの中で、「おやつ」に限らない多くの課題が浮上し、「子供を安心して預けられる場所にしてほしい」と、「すくすく」の学童機能を問う活動を始めている。2月2日には、タワーホール船堀(江戸川区船堀)で、品川区の全児童対策事業「すまいるスクール」での現場経験者の講演を含む学習会を開催した。

「40人までが適当」

 現在、国では学童保育の質の向上をめざした基準づくりを進めている。昨年12月には厚生労働省の諮問機関、社会保障審議会児童部会の「放課後児童クラブの基準に関する専門委員会」が大枠を固めて報告書を提出した。この中では、「集団規模はおおむね40人までが適当」「職員には1人以上の児童の遊びを指導する者の有資格者を含むことが適当」といった具体的な内容が示された。これをもとに厚生労働省が省令による基準を定めると、各市区町村でも現状の見直しが迫られる。

今年は「岐路」の年

 23区の学童政策は国庫補助事業として展開していないため、直接国の方針に左右されるものではないが、こうした情勢を踏まえて現状を問う声を挙げる時期としては好機かもしれない。また、「子ども・子育て支援制度」が来年4月に本格施行されるのに先立ち、今は市町村レベルでの具体的な事業計画の検討が「子ども・子育て応援会議」(江戸川区の名称)などで進んでいる。「えどがわ学童保育フォーラム」では、同区に対して「すくすく」の現状把握と養護的機能を備えた事業展開をめざし、要望書を準備しているという。2日の学習会で、設立の経緯と活動の紹介を行った大野晴子さん(50)(同区清新町)は、「『学童』をどうするか、という岐路に立つ年だと思う。子供の生活に影響が出ることなので、多くの人が関心を持ってほしい」と語る。
「フォーラム」に関する問い合わせはedogawa.gakudo.hoiku.folum@gmail.com/。