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からくり箪笥や文机、飾り棚 一葉の小説の挿絵に見る江戸指物

 台東区立一葉記念館(同区竜泉)で6月2日まで、「樋口一葉 挿絵に見る『江戸指物』展」が開催されている。
 「指物」は、釘(くぎ)を使わずに木と木を組み合わせる「ホゾ組み」で作る木工芸。江戸指物は、江戸期に京都から伝来した指物が、江戸の人々の好みに応じて作られたことに始まる。
 雑誌などに掲載された樋口一葉の小説の挿絵にも、当時の生活用品である火鉢や行灯(あんどん)などの指物が登場する。同展では「江戸指物」の伝統工芸師・渡辺彰さん(49)の作品を挿絵とともに展示し、一葉が生きた時代の日常生活を紹介している。
 同展は同記念館が昨年から始めたご当地シリーズ企画展の第2弾。渡辺さんは記念館近くに工房を構える「指物『渡辺』」の三代目で、「昔を振り返りながらも、新しいものを取り入れている」と話す。
 会場には、渡辺さんが考えた機能的で遊び心のある作品が並ぶ。「巴(ともえ)手許(てもと)箪笥(だんす)」は、両面で二つの異なるデザインと機能が楽しめる。新築祝いをテーマにしたからくり箪笥「大黒柱」には扉があり、閉めたときは重厚で力強い外観。
 これを開くと、内部の小さな突起ひとつで三つの引き出しに鍵が掛かったり、底面に一見しただけでは分からない〝へそくり用〟の隠しスペースがあったりと、さまざまな仕掛けがあるからくりの姿が現れる。作品以外にもホゾ組みの構造や、材料の木材、製作に使う道具などを展示・紹介している。
 「昔は鏡台や針箱、くけ台などの指物が嫁入り道具の定番でしたが、今はあまりなじみのない人も多いと思う。文学と絡めた展示は初めてですが、こういう機会に指物を知ってもらい、まだまだこういったものを作っているということも知ってもらえれば」と渡辺さんは話す。
 一葉は17歳で父を亡くし、一家の生活苦を打開するため、龍泉寺町(現在の竜泉)で1年ほど雑貨や駄菓子を売る店を営んだ。後に執筆された小説「たけくらべ」は、竜泉寺町界隈(かいわい)と遊廓(ゆうかく)吉原が舞台になっている。龍泉寺町の人々は、一葉の業績を後世に残そうと「一葉協賛会」を結成し、記念碑の建立などに取り組んだ。同記念館は、有志会員の積立金を基に用地を取得し、台東区に寄付、1961年に区が開館した。常設展示では、処女作「闇桜」の原稿や「たけくらべ」の草稿など、100点余りを展示している。
 渡辺さんの祖父・松太郎さんも協賛会有志の一人。同展では、松太郎さんが制作し、一葉が愛用していたものを忠実に再現した文机(ふづくえ)と、代表作の飾り棚も展示している。
 午前9時~午後4時30分開館(入館は4時まで)。月曜休館(祝日の場合翌日)。入館料300円(小中高生100円)。問い合わせは同館電話3873・0004。